2024年、フロリダオオアリで、負傷した仲間の脚を噛み切る創傷ケアが報告された。人間以外で、感染リスクを下げる方向に働く仲間の脚の切断が報告された珍しい例だ。

しかも、何でも切るわけではない。研究チームが脚の大腿節を傷つけると、仲間は傷を舐めた後、脚の付け根へ移動して切断した。処置を受けた個体では高い生存率が報告された。

下の傷は、むしろ切らない

同じ脚でも脛節を傷つけると、アリは切断せず、傷口を長く舐めて処置した。研究者が脛節の傷を持つ個体を人工的に切断した場合、生存率は低かった。

つまり見た目には同じ『脚のケガ』でも、傷の場所によって有効な処置が違う。

鍵は、切断に間に合うかどうか

CT解析では大腿節に体液循環に関わる筋肉が多く、大腿節の傷では細菌が体内へ広がる速度が比較的遅くなる可能性が示された。その時間の猶予があるため、何十分もかかる切断が間に合うと考えられている。

一方、脛節では感染が広がるのが速く、切断に時間を使うより傷を舐める方が有利になる可能性がある。

手術に約40分

アリの切断は一瞬ではない。傷を舐め、口器を少しずつ脚の付け根へ移し、何度も噛み続ける。一回の切断には少なくとも約40分かかると報告された。

もちろん、アリが人間のように『医学的に判断している』とまでは言えない。研究が示しているのは、傷の位置や生理条件に合った行動パターンが進化しているということだ。

それでも、数ミリ〜1センチほどの生き物が仲間の傷を見て処置を変えるという事実はかなり異様だ。

SOURCE / 原典

この記事の出典

本文の事実確認に使用した原典です。FORWARD BASIS独自の解釈・整理は本文内で区別しています。

  1. 論文Frank et al. — Wound-dependent leg amputations to combat infections in an ant society (Current Biology, 2024)