候補者Aは、会話のテンポがいい。質問の意図をすぐにつかみ、共通の話題も多い。面接が終わるころには、「一緒に働く姿が想像できる」と感じる。

候補者Bは、答えるまでに少し間がある。ただし、過去の仕事を聞くと、状況、判断、結果を具体的に説明する。話は滑らかではないが、証拠はある。

どちらを高く評価するだろう。

面接では、会話が豊かなほど多くの情報を得たように感じる。しかし、情報が増えた感覚と、将来の仕事ぶりを予測する精度は同じではない。

ここで分けたいものが二つある。

• 対話の豊かさ:相互理解が進み、一緒に働くイメージを持てること

• 比較の公平さ:仕事に関係する同じ証拠で、候補者同士を比べられること

どちらも採用には必要だ。ただし、一つの雑談的な面接に両方を任せると、手応えの強さが評価基準を上書きしやすい。

人は、ランダムな答えにも一貫した人物像を見る

Jason Dana、Robyn Dawes、Nathanial Petersonが2013年に発表した研究は、自由形式の面接に対する信頼がどれほど根強いかを調べた。

研究対象は採用候補者ではなく、学生の成績予測だった。複数の研究のうち一つでは、面接をする側が、学生の過去の成績などに加えて自由形式の面接から次学期のGPAを予測した。

一部の面接では、回答者が質問内容に関係なく、ランダムに決められた順序で「はい」「いいえ」を答えた。それでも面接者は、回答から筋の通った人物像をつくり、予測への自信を持った。実際の予測精度は、過去の成績だけを使った場合より、面接を加えた場合のほうが低かった。

別の研究でも、回答がランダムに生成されていると分かる情報だけでは、そこから物語を読み取る傾向を十分に抑えられなかった。また、参加者は面接なしより、ランダム回答を含む面接がある状態を好んだ。

私たちは、会話から意味を見つけるのが得意だ。そして、意味が見つかると「相手を分かった」と感じる。

しかし、説明できる人物像ができたことは、予測が当たる証拠ではない。

だからといって、「面接は役に立たない」ではない

この研究だけで、採用面接全般を否定することはできない。

大学生が大学生のGPAを予測した研究であり、実際の職務成果を扱っていない。対象人数や設定にも制約がある。自由形式の面接が判断を悪化させうる仕組みを示すには有用だが、すべての面接にそのまま一般化すべきではない。

さらに、採用選考の研究全体を見ると、面接の「構造」が重要になる。

Paul Sackettらが2022年に発表したメタ分析の再検討は、採用手法と職務成果の関連について、過去の推定値が範囲制限の補正によって高く見積もられていた可能性を扱った。多くの手法で妥当性の推定は従来より低くなったが、その再推定でも構造化面接は最上位に位置づけられた。

ここから導ける実務的な結論は、「面接をなくす」ではない。

自由な会話だけで選ぶのをやめ、仕事に関係する証拠を比較できる形にすることだ。

面接の中に「選考室」と「対話室」をつくる

面接を二つの目的に分けると、設計しやすい。

選考室:比較できる証拠を集める

ここでは、候補者ごとに基準を変えない。

1. 採用前に、職務で必要な行動や判断を4〜6項目にする

2. 各項目について、全候補者へ同じ中核質問をする

3. 「良い回答」の印象ではなく、1・3・5点などの具体例を事前に置く

4. 面接官は、全体会議の前に各自で採点する

5. 点数と同時に、その根拠となる発言や事例を残す

項目数や尺度は万能な正解ではなく、導入用の提案である。大切なのは、候補者を見てから評価軸を動かさないことだ。

追加質問を禁止する必要もない。ただし、「全員に共通する比較材料」と「その候補者を理解するための探索的な会話」を記録上で分ける。

対話室:相互理解を深める

ここでは、候補者からの質問、チームの働き方、期待と不安、価値観のすり合わせを自由に話す。

採用は会社が一方的に人を選ぶだけではない。候補者も、働く場所を選んでいる。自然な会話や人間関係の感触を排除すればよいわけではない。

ただし、「話しやすかった」を、そのまま職務能力の点数に変換しない。

対話室で得た情報を選考へ戻すなら、「どの職務基準に関係する、どの発言か」を言葉にする。言えない場合、それは大切な印象ではあっても、比較可能な証拠ではないかもしれない。

構造化にも、失敗の仕方がある

面接を構造化すれば、自動的に公平で正確になるわけではない。

そもそもの職務基準が間違っていれば、同じ質問をしても同じ方向に誤る。細かすぎる採点表は、評価の精度が高いように見せるだけの「偽の精密さ」になりうる。障害や言語背景などに応じた合理的な配慮まで、画一性の名の下に拒むべきでもない。

構造化面接だけで採用を完結させる必要もない。職種に応じて、ワークサンプル、実技課題、経歴確認など、別の証拠と組み合わせる余地がある。

構造の役割は、人間らしさを消すことではない。

印象が証拠を追い越さないように、判断の順序を守ることだ。

面接後の会議で最初に聞く質問を、「どうだった?」から変えてみる。

「どの基準について、どんな証拠があった?」

会話の手応えは、そのあとに話せばいい。

Sources

• Jason Dana, Robyn M. Dawes, Nathanial Peterson, “Belief in the Unstructured Interview: The Persistence of an Illusion,” Judgment and Decision Making 8(5), 2013. Publisher page / DOI

• Paul R. Sackett, Charlene Zhang, Christopher M. Berry, Filip Lievens, “Revisiting Meta-Analytic Estimates of Validity in Personnel Selection: Addressing Systematic Overcorrection for Restriction of Range,” Journal of Applied Psychology 107(11), 2022. Accepted manuscript record / DOI

SOURCE / 原典

この記事の出典

本文の事実確認に使用した原典です。FORWARD BASIS独自の解釈・整理は本文内で区別しています。

  1. 論文Dana, Dawes & Peterson — Belief in the Unstructured Interview: The Persistence of an Illusion (2013)
  2. 論文Sackett et al. — Revisiting Meta-Analytic Estimates of Validity in Personnel Selection (JAP, 2022)