脳がないクラゲも眠る。正確には、人間のような中央の脳を持たないサカサクラゲの仲間に、科学的な基準を満たす睡眠のような状態が確認されている。

2017年、Caltechの研究チームはCassiopeaを追跡した。夜になると活動量が下がり、刺激への反応が遅くなり、睡眠を邪魔すると翌日に活動が落ちた。単に動かなくなるだけではなく、『起こせる』『寝不足の反動がある』という睡眠の特徴を示した。

脳がないのに、寝不足になる

Cassiopeaには人間のように情報を一か所へ集める脳はないが、体中に神経が網のように広がる神経網がある。研究では、夜の刺激への反応時間が昼より長くなり、起こした直後には反応が戻った。麻痺ではなく、可逆的な休止状態だった。

さらに夜間の睡眠を邪魔すると、その後の活動に反動が出た。これは睡眠を行動から判定するときの重要な条件の一つだ。

2026年、DNA損傷との関係も調べられた

2026年にNature Communicationsで発表された研究は、Cassiopea andromedaとイソギンチャクの一種を調べた。睡眠不足では神経細胞のDNA損傷指標が増え、自然な睡眠や実験的に促した睡眠の後には低下した。

さらにDNA損傷を増やす処置の後には睡眠圧が高まった。これは『睡眠の目的はDNA修復だけ』と証明したものではないが、神経活動と睡眠のあいだに細胞レベルの保守機能が関わる可能性を強くする。

睡眠は、脳より古いかもしれない

私たちは睡眠を『脳を休ませる時間』と考えがちだ。でも、中央の脳を持たない動物にも睡眠があるなら、その起源はもっと古い。

神経を使う、細胞に負荷がたまる、活動を落として整える。睡眠の原型は、巨大な脳ができるより前から存在していた可能性がある。

人間とクラゲをそのまま同じ仕組みだと考えることはできない。それでも、睡眠を『脳がある動物だけのぜいたく』として見る直感は崩れる。

SOURCE / 原典

この記事の出典

本文の事実確認に使用した原典です。FORWARD BASIS独自の解釈・整理は本文内で区別しています。

  1. 論文Nath et al. — The Jellyfish Cassiopea Exhibits a Sleep-like State (Current Biology, 2017)
  2. 論文Aguillon et al. — DNA damage modulates sleep drive in basal cnidarians with divergent chronotypes (Nature Communications, 2026)