月と地球の距離は固定されていない。月レーザー測距による観測では、月は現在、平均して1年あたり約3.8cmずつ地球から遠ざかっている。

たった数センチ。でもこれは、地球と月のあいだで今も角運動量の受け渡しが続いている証拠だ。

人類は月へレーザーを撃って測っている

アポロ計画などで月面に置かれたレーザー・レンジング用の反射器へ地球からレーザーを送り、戻ってくるまでの時間を測ることで、地球と月の距離を高精度で追跡できる。

つまり『月が毎年数センチ遠ざかる』という数字は、想像ではなく50年以上の測距観測で確かめられてきた。

なぜ月は遠ざかるのか

月の重力は地球の海に潮汐を起こす。地球は月の公転より速く自転しているため、海の膨らみは月の真下より少し先へずれる。その膨らみの重力が月を進行方向へ引っ張り、月の軌道へ角運動量を渡す。

月はより大きな軌道へ移り、そのぶん地球の自転は長期的に少しずつ遅くなる。月が遠ざかることと、地球の一日が長くなることは、同じ地球―月システムの二つの面だ。

皆既日食も永遠ではない

月が遠ざかれば、地球から見た月の見かけの大きさは少しずつ小さくなる。十分に遠い未来には、月が太陽を完全に隠す皆既日食は起こらなくなると考えられている。

ただし、何億年先も現在の3.8cm/年がそのまま続くわけではない。海の形や地球内部の状態でも後退率は変わる。『約6億年以上先』といった見積もりは遠い未来の目安だ。

空にある月と、足元の潮と、一日の長さは別々の話ではない。全部、同じ物理でつながっている。

SOURCE / 原典

この記事の出典

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  1. 公式NASA JPL — The Apollo Experiment That Keeps on Giving