ブラックホールへ近づいた星は、一度で引き裂かれて終わる——そんなイメージがある。でも実際の宇宙には、軌道を回りながら何度も戻り、そのたびに身体の一部だけを失うと考えられる星がある。

NASAのSwift宇宙望遠鏡が捉えたSwift J0230では、太陽に似た星が巨大ブラックホールの近くを通るたびに物質を失っているモデルが観測をよく説明する。推定では、一回の接近で地球数個分に相当する物質を失う。

一度で死なない潮汐破壊

ブラックホールの近くでは、星の手前側と奥側で重力の強さが大きく変わる。その差が星を引き伸ばし、場合によっては破壊する。これが潮汐破壊現象(TDE)だ。

完全なTDEなら星は大きく壊れる。しかし接近距離や星の構造によっては、外側だけが剥ぎ取られ、中心部分が生き残ることがある。これが部分的・反復的な潮汐破壊だ。

Swift J0230では、同じ場所から数週間おきにX線の増光が繰り返し観測された。NASAは、太陽に似た星が中間質量級と考えられるブラックホールを回り、接近のたびにガスを剥ぎ取られている可能性を示している。

同じ星を、何度も少しずつ食べる

近年の理論研究では、部分的な潮汐破壊を生き延びた星が膨張したり、次の接近で失う質量が変わったりする可能性も議論されている。

ただし、Swift J0230の説明は観測データに基づく有力なモデルであり、星が削られる瞬間を直接撮影したわけではない。周期的なX線増光などを最もよく説明する解釈だ。

ブラックホールは、近づいたものを全部一瞬で消す宇宙の掃除機ではない。距離、速度、軌道、星の密度によっては、削られながら何度も戻ってくる。

SOURCE / 原典

この記事の出典

本文の事実確認に使用した原典です。FORWARD BASIS独自の解釈・整理は本文内で区別しています。

  1. 公式NASA — Swift Learns a New Trick, Spots a Snacking Black Hole
  2. 論文Partial tidal disruption events: the elixir of life (MNRAS, 2024)